長期安定性に優れる測温抵抗体温度計の原理,特徴について

計装 ▶︎計装設備温度計の基礎測温抵抗体温度計

測温抵抗体温度計とは,熱電対と共に工業用,産業用の温度計として広く利用されています。測定方法は素子の抵抗値を読むことにより,それを温度へ変換します。

目次

素線の材料

素線の材料の特徴として,

  • 抵抗-温度係数が大きく直線性であること
  • 抵抗値が得られること
  • 広い温度範囲で使用できること

などが挙げられますが,JISには白金測温抵抗体のみが規定されています。

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白金以外にもニッケルや銅がありますが,管理人は使用したことがありません。

測温抵抗体温度計の特徴

下に測温抵抗体の特徴をまとめます。

  • 長期安定性がある
  • 熱電対と比較してノイズに強い
  • 測定精度が高い
  • 微細でデリケートな構造のため,機械的強度は弱い
  • 応答が遅い
  • 600~650℃以上の高温測定ができない
  • 導線抵抗が誤差の原因になる
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長期安定性ということがポイントですね。信頼性の高い測定ができることはとても大切です。

測温抵抗体温度計の構造

現在はセラミック浮遊タイプがほとんどのような気がします。シースに入っていることや温度計保護管に入れて使用することも多いかと思います。

測温抵抗体温度計の構成

測温抵抗体に一定の電流を流し,その両端の電圧値を電流で割ると測温抵抗体の抵抗値が求まります。この抵抗値を温度に換算しています。

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オームの法則の「E = IR」で簡単に抵抗値が求まることがわかりますね。

『2線式の回路構成』は単純に配線抵抗があるため,外気温の変化により測定誤差を生じてしまします。

以下に工業用とで用いられる『3線式の回路構成』を示す前に,ブリッジ回路について説明します。

ブリッジ回路はR1×R3=R2×R4のとき,検流計Gには電流が流れないという法則があります。「ホイートストンブリッジ回路」といいます。

次に温度計を接続したブリッジ回路を示します。R3は可変抵抗です。

先程のブリッジ回路のR3にあたる抵抗はB-B間の配線抵抗「r」と可変抵抗「R3」です。R4にあたる抵抗は配線抵抗「r」と検出端の「R」(素線)となります。

可変抵抗R3を検流計Gに電流が流れない抵抗値に変化させると

R1×(R3+r)=R2×(R+r)

となります。R1=R2なので,

R3+r=R+r

となり,R3=Rとなることがわかります。『3線式の回路構成』で接続すると,配線抵抗rを無視することができるため,配線による誤差がなくなります。

さらに4線式と高精度に測定できる方法があるのですが,ここでは割愛します。

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入社以来計装エンジニアをやっていますが,4線式は見たことがありません笑

測温抵抗体の規定電流

注意事項として測温抵抗体には規定電流以下の電流で測定しなければなりません。規定電流1mAの測温抵抗体に2mAの測定電流を流すと発熱し,実際の測定したい温度より高い温度を表示してしまうため注意が必要となります。

測温抵抗体温度計の不具合・トラブル

測温抵抗体温度計の不具合・トラブルについて以下にまとめます。

  • 断線による指示不良
    測温抵抗体は振動衝撃に弱く,素線が断線しやすいです。指示が振り上がった,振り下がった場合は温度計の断線から疑っても良いと思います。
  • 指示が振り上がる
    素線の断線による指示の振り上がりです。上図のA,Bが断線した場合は抵抗値が無限になるため,指示が振り上がってしまいます。
  • 指示が振り下がる
    素線の断線による指示の振り下がりです。上図のbが断線した場合は振り下がります。電圧がかからなくなるためです
  • 規格混同による誤差
    変換器など設定が間違っていないか。Pt100Ω or JPt100Ωを混同していないか確認が必要です。
  • 自己発熱による誤差
    規定電流以上の電流を流していないか確認も必要です。規定電流はJIS規格に制定されています。
  • 絶縁低下による誤差
    設置雰囲気の影響(多湿環境等)や絶縁材の劣化,製造時の水分の侵入などの使用中に絶縁抵抗が低下することがあります。絶縁低下の具合により測定に誤差を生じる場合や,測定自体が不能になる場合があります。

測温抵抗体温度計の規格(JISやIECなど)

測温抵抗体温度計に関わる規格は以下に制定されています。

JIS C 1604
測温抵抗体

  • 旧JISと新JISについて

測温抵抗体の温度と抵抗値の関係は旧JISと新JISで異なります。

旧JIS:Pt100Ωの100℃の抵抗値 138.51Ω
新JIS:JPt100Ωの100℃の抵抗値 139.16Ω

となっていますので,受信側で新旧を間違えてしまうと,温度が正しく表示されません。
旧JISの測温抵抗体に新JISの受信計を接続すると,実際の温度より1.7℃高く表示されます。

余談として…Pt100Ωより,JPt100Ωの方が,温度係数が大きく,均一性,安定性共に優れています。信頼,安全を要する箇所には旧JISのJPt100Ωを使用することもあります。

参考資料

株式会社岡崎製作所 – 温度センサの取扱説明書

さいごに

測温抵抗体についてまとめると

  • JISには白金の規定しかない。
  • 高精度に測定でき,長期安定性がある。
  • 機械的強度がないため,振動等に弱い
  • 旧JIS(JPt100Ω)と新JIS(Pt100Ω)とで規定された抵抗値が違う(未だにJPt100Ωは購入可。)
  • 3線式で構成すれば配線抵抗を無視できるため,高精度に測定ができる。

以上,測温抵抗体温度計についてでした。

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この記事を書いた人

生産技術系のエンジニアです。日々,計装関係の仕事に従事しています。 生産技術系ブログ【計装便覧.com】を運営中。主に計装設計についてまとめています。また仕事の時短ワザなども紹介しています。計装技術については初心者でもわかりやすくをモットーに執筆中!

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