製造業において重要な部門のひとつが「生産技術」です。しかし,生産技術がどんな役割があって,どのような業務を行っているかはあまり知られていません。
本記事では生産技術の具体的な仕事内容について紹介したいと思います。転職や就活の情報になればと思います。
エンジニアとは
昨今,エンジニアと言ってもさまざまなエンジニアがいます。
「エンジニア」とは辞書では以下のように定義されています。
機械・電気などの技師。更に広く、工学者や技術者。
Oxford Languagesの定義
「技術者」とは以下のように定義されています。
技術⑴を職業とする人。 ▷ engineer の訳語として使うことが多い。「―家」の方は、時代の技術を指導するような技術思想の持ち主とか、きわめてすぐれた技術者とかを指す。▷ ぎじゅつや▷ 。
Oxford Languagesの定義
さらに専門的に分類するかのように
システムを構築する人をシステムエンジニア
インフラを作る人をインフラエンジニア
技術的な専門知識を活かし販売活動をするセールスエンジニア,
など,『****エンジニア』と呼称することが多いようです。
生産技術とは
「生産技術」とは,製造業の生産現場において,生産ラインの設計や製造プロセス設計,または保守などを行うことです。
生産ライン/製造プロセスは,原料や材料からある製品を製造する一連の流れを意味します。
一連の流れとは『部品加工』 ⇒ 『組み立て』 ⇒ 『検査』 ⇒ 『出荷』というようなことです。
このような生産ライン/製造プロセスを設計/保守をすることによって,安全で,高品質で,低コストなな生産体制を構築することが生産技術の仕事となります。
これら仕事に従事する人を「生産技術エンジニア」と呼ぶこともあります。
生産技術 設計(Design)
生産技術エンジニアにおいて大きく2つ業務が分かれます。
一つは「設計」の仕事です。
製品を製造するためには製造設備が必要不可欠です。しかし,製造メーカーというのは自社のオリジナル製品を作ることが多いため,汎用設備で製造できることは少ないかと思います。
そこで自社オリジナルの商品を製造するための設備を設置する必要があります。その商品を製造するためには以下のように,
「どんな設備にするか」
「どのように設置するか」
「いつまでに設置するか」
「設置するのにいくら掛かるのか」
など検討する必要があります。
製造設備を一つ設置するだけでも様々なことを検討しなければなりません。これらを計画,設計,実行まで行うことも生産技術の仕事の一つです。
設備の導入にはコストが掛かります。莫大なコストを掛けて設計し,設置するまで任されることもあります。普通の生活では扱うことないであろう金額を自分の裁量で使用できることが私にとっては大きなやりがいと感じています。初めて設置した設備が稼働し,製品を生産している現場を見たときは感動しました。
生産技術 保守(Maintenance)
もう一つは「保守」の仕事です。
製造設備は一度設置したら永遠に製造できるわけではありません。「モノ」である以上いつかは故障します。しかし,故障の度に設備を更新していてはいくらお金があっても足りないのは言うまでもありません。(更新したほうが安い場合もありますが)
そこで,製造設備を点検・整備をすることで不具合を発見したり,故障部を修理を行うなどして,設備が問題なく稼働するように保守していくこともまた生産技術の仕事となります。
車の車検と同じで,定期的に製造設備を点検・整備するだけで一式更新などの重大な故障を防ぐことができます。結果的に生産ラインを止めることなく,安定的に生産できる設備ができますね。
保守もやればやるほど良いものでもありません。会社は利益を求めるため,保守費が上がってしまっては意味がありません。
製造設備の稼働率や故障履歴,製造設備メーカーの耐用年数などから点検周期を決定し,これら整備するためのコストを算出して効果的な保守計画を立案・実行していくことも仕事の一つとなります。
「設計」業務に比べて地味なイメージが多い保守です。実際に大変な仕事だと思っています。特に24時間365日動いている生産ラインを保守している担当者は夜間休日に呼び出されることもあります。
不具合が改善したときには製造現場の社員からお礼を言われたりすることもあります。管理人も実際に言われたときは「やってよかった」と思うことがたくさんありました。
生産技術はどんな人が向いているか
10年くらい生産技術の仕事をしてきて感じたことですが,以下の特徴の人が多いように思えます。
- コミュニケーション能力の高い人
これはどんな業種,どんな仕事でも共通して言えることではないでしょうか。生産技術は生産に関わる多くの部署と多く関わりながら仕事をします。
関わる人は一般職から部長など,年齢もバラバラです。製造部門だけではなく設備を購入する窓口になる購買部,法律関係を調査する総務部,資産管理や検収処理を行う経理部など製造部門だけではなく多くの部署との関わりも必要になります。
そのため,どんな人とでもコミュニケーションができる能力は生産技術では必要不可欠と感じています。
- 論理的思考を持つ人
生産技術エンジニアは論理的な思考が求められます。全てに根拠を持って仕事を行っているためです。
「設計の根拠」「予算の根拠」「保全計画の根拠」どんなアウトプットでも全てに根拠を求められます。
論理的な道筋を常に考えて仕事をすることから論理的な思考を持った人が向いていると思われます。
- 管理能力高い人
「ヒト」「モノ」「カネ」「ジカン」といったように管理しなければならいことが多いです。
「ヒト」はコントラクター(請負者)やベンダー(販売会社)の管理
「モノ」は設備の管理
「カネ」は予算の管理
「ジカン」は工期の管理
これらにおいて管理していかなければなりません。管理能力の高い人が多く働いているように思えます。
- ものづくりが好き,ものいじりが好きな人
製造業である以上,ものづくりが好きであることはとても重要かもしれません。製造に興味がなければ面白くないと思います。
ものいじりが好きという人は反対に向いている仕事かもしれません。
どんな仕組みで動いているのか,設備がどんな構造をしているのか,これらに興味があることはとても重要な要素と思います。やはりそういった人が多く働いていることも事実です。
会社の規模によっての違い
会社の規模によっても生産技術の業務の範囲が大きく異なると感じています。
- 中小企業
中小企業の業務範囲は基本的に広い印象です。人が多くいないため,マルチプレーヤーが多い印象です。複数の業務を兼任していることが多いですね。例えば機械設計・電気設計が両方できる人はザラに居る印象です。 - 大企業
人が多くいるため,業務の細分化が行われています。例えば機械設計は機械設計だけ,電気設計は電気だけといったように。ただし,それら専門分野の理解度/知識量は目を引くものがあります。
資金面も潤沢にあるため最新設備・最新技術をどんどん取り入れている印象です。
企業としての長年の技術の蓄積も凄まじくあるため,様々ノウハウ・要領・ルールで雁字搦めとの印象もあります。良い言い方をすれば誰がやっても間違いがないような設計の道筋が仕組みとして作られています。
さいごに
生産技術はさまざまな専門知識や技術が求められます。しかしそれ以外にも各部門との連携がスムーズにできるように,コミュニケーション能力もとても重要な要素となっています。
生産技術はやらなければならない業務が多く,責任もまた多くのしかかってきます。決して楽な仕事ではありませんが,やりがいはとてもあるように思えます。
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