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コリオリ式質量流量計は管内を流れる流体の質量流量を測定する計器です。
このコリオリ流量計の仕組み,構造,測定原理について説明します。
質量流量とは

質量流量とはある点を単位時間中に通り抜ける流体の「質量」を意味します。
コリオリ式質量流量計は体積流量すなわち単位時間あたり流れる体積(単位の例:m3/s)を測定してから質量に変換しているわけではなく,質量を直接測定していることがポイントです。
流体の密度が一定であれば体積流量を密度で割れば質量流量に変換できますが,密度が一定あることが条件になります。
しかしながら密度は温度や圧力で変化し,気泡/個体が交じるなど複数の相(複数の液)からなる流体でも密度が変化してしまうため,間接的に質量流量を求めるにも難しいです。
コリオリ式流量計により質量流量が測定できるということはプロセス制御においてはとても重要な要素を持った流量計であることがわかります。
コリオリとは
回転座標系上で移動した際に移動方向と垂直な方向に移動速度に比例した大きさで受ける慣性力です。


コリオリ式流量計の構造
株式会社オーバル コリオリ流量計の計測原理
基本的に機械部品としては流出流入口のフランジと流路を分けるマニフォールド,フローチューブで構成されています
質量流量を計測する電気部品ととして左右に電磁ピックオフ、電磁オシレータそして温度センサが配置されています。
電磁ピックオフ、電磁オシレータは単なるマグネットとコイルの組み合わせで,一方のチューブにマグネットが固定されもう一方のチューブにはコイルが固定されています。
電磁ピックオフは左右に2箇所に取り付けられチューブのねじれによる位相差信号を検出します。
※オシレーター:発信回路
コリオリ式流量計の原理
「流速による入口出口の電圧出力の位相の変化」と「密度による電圧出力の周期の変化」で質量流量が測定できます。
コリオリ式流量計のチューブは上下に振動しています。
「流れなし」の場合,チューブがただ上下に振動します。
「流れあり」の場合,チューブが入口,出口でコリオリ力が加わるため,チューブに「ねじれ」が生じます。
この「ねじれ」を出力電圧の「位相」のズレ(ΔT)を算出し,質量流量が測定できます。
※


またチューブ内の密度が変わることで電圧出力の周期の違いで測定しています。

このチューブの振動周期はチューブの温度変化により弾性力が変わるため,チューブの温度を測定し,補正しています。そのため,コリオリ式流量計は温度も流量計から情報を得ることができます。
コリオリ式流量計の特徴
下にコリオリ式流量計の特徴をまとめます。
- スラリー,高密度流体が測定できる
- 体積流量,密度,温度も計器から情報を出力できる
- 直管部が不要
- 指示値(読み値)の±0.15~0.1%の測定精度がある(高精度)
- 測定の応答が早いため,脈動流に強い
- 圧力損失が大きい
- 計器が高価である
- チューブを振動させて測定するため,振動を乱す外的振動に弱い
- ※最近の機種は外的な振動にも強いと聞きます。
- チューブが細いため,清掃が困難
- 内部でチューブを曲げているため,設置スペースを考慮しなければならない
- ※直管形で解決できることもある
さいご
コリオリ式流量はメリットだけを見るととても魅力的な流量計です。汎用性,応用力も高く使い勝手はとても良い流量計と思います。
ただし,計器自体が高価であることが(電磁流量計の2~3倍くらいの価格)最大のデメリットかと思います。故障したら一式更新になることが多いです。
また既設プロセスに導入するときも圧損が大きいため,ポンプの揚程や流体の移送距離などに配慮が必要となります。(圧損が大きく導入できない場合もあります)
導入時はよく検討して設置する必要がありますね!
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