【生産技術/計装】単純な浮き沈みを利用するフロート式液面計の原理,特徴【フロート式液面計】

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目次

フロート式液面計の測定原理

フロート(浮子:うきこ)式液面計は液面に浮かべたフロート(浮子)の位置により液面のレベルを検出するセンサです。

液体の導電率や比誘電率などの電気的特性には依存しないことが特徴です。構造が簡単で安価で古典的な液面計です。

フロート式液面計の種類と構造

フロート式液面計ですが,様々な種類があります。それら種類について紹介します。

  • 巻取り式(プーリ形)

引用元
株式会社東京計装 FT-1000/FP-100シリーズフロート式レベル計

ワイヤあるいはテープ等により吊り下げたフロートを液面の上に浮かべて,液位の変化(フロートの上下運動)をワイヤあるいはテープをプーリに巻取り,

プーリの回転に変換し,液位を検出します。広い範囲の液位変化の測定が可能で,現場指示や伝送器による測定値の出力ができます。

巻取り式は大きい測定範囲(30mくらい)で,なおかつ高精度に測定できる特徴があります。

巻取り式にはカウンタウエイト式とスプリングバランス式レベル計があり,スプリングバランス式の方が高価ですがより高精度に測定できます。

スプリングバランス式の精度はJISに規定されています。下方の規格をご確認ください。

  • ガイドパイプ式

フロート内部にマグネット,ガイドパイプ(プローブ)内にリードスイッチ(磁気駆動型スイッチ)が内蔵されています。

棒状のガイドパイプ(プローブ)にリング状のフロートを貫通させた構成となっています。

フロート液体の浮力によってフロートが上下し、フロートがリードスイッチの高さに来ると,リードスイッチがON(もしくはOFF)されます。これらのON(OFF)を検出することで,液位を測定します。

端子ボックス,プロセス接続,フロート,ステムから構成され,液体の腐食性や使用条件により,フロート,ステムの材質を選定します。

ただし,液体の「粘度」「密度」によってはフロートがうまく上下しない場合があるため,注意が必要です。

onilog

リードスイッチとは密閉された管内(ガラスや金属)に2つの強磁性体リードを含む単純な磁石の相互作用を使用して接点を開閉するスイッチです。

  • ボール(アーム)フロート式

液面がボールフロートの中心線より下にあるときには,フロート側が下がります。液面が上昇しボールフロートが浮力を受け,上昇するとフロートが上がり,フロートに対して支点の反対側が下がり,マイクロスイッチをON(OFF)し,液位を測定します。

  • 磁歪式

引用元
株式会社ノーケン 磁歪式レベル計 MS形

基本的な構成はガイドパイプ式とほぼ同じで棒状のセンサープローブにリング状のフロートを貫通させたもので,フロートには磁石が入っています。

ガイドパイプ式と違うのがセンサープローブには強磁性体でできた磁歪線が入っている点です。磁歪式は構造がシンプルで精度が良いことが特徴です。

強磁性体が磁化するとき,わずかな変形(ひずみ)が生ずる現象を「磁歪」言います。

パルス電流を磁歪線に流すと,磁歪線の円周方向に磁場が瞬間的に発生します。(右ねじの法則)

磁石がある場所では軸方向に磁場があるため,磁場の合成により斜め方向の磁場が瞬間的に発生します。その結果,この部分に「ねじり歪み」が発生します。

ねじり歪みは機械的振動のため,超音波として伝搬されます。この伝搬時間を検出することで液位を測定することができます。

  • マグネットゲージ(マグネットフロート)

引用元
BBKテクノロジーズ マグネットフロート式液面計

マグネット(ゲージ)式液面計は,マグネットの磁力を利用して外部表示器のローターを反転させて,反転したローターの色の違いにより液位を示す液面計です。

駆動用の電力が不要なため,電源供給が難しい場所や,液面計の2重化などに使用されます。タンク側面などに設置されるサイトグラス(透視式,反射式)など直視してか確認する液面計より,

視認性に優れているのが特徴です。

フロート式液面計の特徴

下にフロート式液面計の特徴をまとめます。

  • 導電率(静電容量式液面計)や比誘電率(マイクロウェーブ式液面計,静電容量式液面計)の電気的特性に依存しない
  • 構造がシンプルであるため,故障が少ない
  • 種類によるが高精度に測定できる
  • 種類によるが広い範囲を測定できる
  • 物理的にフロートが動くことで測定するため,付着物があると動作不良になる
  • 高粘度流体は上下動作を妨げるため,不向き。もしくは使用できない
  • 撹拌機など系内に流れがある箇所は外筒管,内筒管など流れを緩和する必要がある
  • 磁力を利用して検出するタイプは磁界が発生する場所では誤作動の原因となる
  • 錆,鉄粉などマグネットに吸着する流体を含むプロセス流体は,マグネットに吸着するため,不適

フロート式液面計の規格(液面計全般)

フロート式液面計に関わる規格は以下に規定されています。(フロート式だけではありませんが)

JIS B7560
液位測定用自動レベル計

以下のものが規定されています。

  • 種類
    フロート-スプリングバランス式レベル計
    ディスプレーサーサーボバランス式レベル計
    マイクロ波式レベル計
    静電容量式レベル計
    その他
  • レベル計の等級と記号
    等級:A級 記号:A
    測定液位の±0.02% 液位が10m以下のときは±2mm

    等級:B級 記号:B
    測定液位の±0.05% 液位が5m以下のときは±2.5mm

    等級:C級 記号:C
    測定液位の±0.08% 液位が5m以下のときは±4mm

    等級:S1級 記号:S1
    任意の液位について±7.5mm

    等級:S2級 記号:S2
    任意の液位について±10.0mm
  • ヒステリシス差の許容値
    A級:1mm
    B級:3mm
  • 感度
    A級およびS1級:2mmの液位変化に対し,1mm以上の指示変化を生じること。
    B級およびS2級:4mmの液位変化に対し,2mm以上の指示変化を生じること。
  • 測定範囲
    5m,10m,15m,20m,25m

さいごに

フロート式はフロート(浮子)の浮き沈みを利用した液面計です。構造自体はシンプルですが,種類はたくさんあるため,測定物やプロセスに適合した種類を選定する必要があります。

安価なものも多いため,冗長化が必要な箇所や簡易的な監視が必要な箇所に使用されることが多い印象です。

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この記事を書いた人

生産技術系のエンジニアです。日々,計装関係の仕事に従事しています。 生産技術系ブログ【計装便覧.com】を運営中。主に計装設計についてまとめています。また仕事の時短ワザなども紹介しています。計装技術については初心者でもわかりやすくをモットーに執筆中!

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