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ディスプレースメント式液面計の測定原理
ディスプレーサはフロートと異なり液面上に浮くわけではありません。
液体中にあるディスプレーサが排除した液体の質量に相当する浮力を液体から受けます。
浮力は以下の式で表されます。
\(F=ρVg\)
\(F:浮力\)
\(V:体積\)
\(ρ:液の密度 [kg/m3]\)
\(g:重力加速度\)
これはいわゆるアルキメデスの原理ですね。
この浮力を検出し液位を知るのが,ディスプレーサ式レベル計です。フロート式と混在する人がいますが,測定原理が違いますので,混同しないでください。
ディスプレーサ式,ディスプレースメント式と呼ばれることがありますが,どちらでもよいと思います。
ちなみにディスプレーサ,ディスプレースメントの意味は…
goo辞書より
displace
1 …に取って代わる(◆(1) replace には「もとへ戻す」と「…に取って代わる」の両意があるが,displace は後者の意のみ.(2) 人に用いると不公正・悲しみ・怒りを表すことが多い)
2 …を(通常の位置から)移す,移しかえる≪from≫
2a 〔通例受身形で〕〈人を〉(祖国・家などから)強制退去させる,追放する,追い出す
2b ((特に米))〈人を〉(役職から)引きおろす,解任[罷免]する≪from≫
3 〈船が〉…の排水量を持つ
displacement
1 移動,転置,置き換え,罷免,解職;追放
2 《物理学》変位;《機械》排気量;《海事》排水量;《地学》移動;《精神分析》(リビドーの)置き換え,転位
ディスプレースメント式液面計の種類と構造
断面積が一定の細長い円筒をスプリングで液中に吊り下げます。(下図)


ディスプレーサーが液中に浸かることでディスプレーサーが軽くなる(浮く)ことは感覚的に理解できると思います。
一方,液に使っていない状態が一番重い(浮力がない)ことも感覚的に理解できると思います。
円筒全体が液面より上にある場合はスプリングは円筒の重さで伸び円筒の重さとスプリングのバネ常数によって決まる位置に静止します。
しかし、液面が上がってきて円筒が液体に浸ると,「液に浸かった分だけ」円筒は浮力を受けて軽くなります。浮力により軽くなった分,スプリングの力により上昇します。
(円筒の断面積)×(液中にある円筒の長さ)×(液体の密度)に比例することから,円筒の位置より液位が測定できます。
これが浮力比例式レベル計の原理となります。
浮力比例式の構造には「コイルばね(スプリング)」と「トルクチューブ」が使用されますが,工業用ではトルクチューブ型が一般的です。
ディスプレーサーに加わる浮力を回転へ変換され,それを読み取ることで液位を知ることができます。


ディスプレースメント式液面計の特徴
下にディスプレースメント式液面計の特徴をまとめます。
- 高精度液位を測定することができる
- 高温高圧の条件下でも測定ができる
- 高圧ガスの認定品も販売されている
- 測定原理がシンプル
- 機器そのものが高価
- 液の密度が変化するプロセスでは注意が必要
- 流れのあるプロセスでは取り付けに注意が必要
- 内筒管や外筒管の設置を検討する必要があります。
- 取り付け口径が大きくなる



ディスプレーサーを液につけることで測定するため,プロセス中に流れや撹拌機など動きのあるものを測定するときは注意が必要です。
ディスプレースメント式液面計の規格(液面計全般)
JIS B7560
液位測定用自動レベル計
以下のものが規定されています。
- 種類
フロート-スプリングバランス式レベル計
ディスプレーサーサーボバランス式レベル計
マイクロ波式レベル計
静電容量式レベル計
その他 - レベル計の等級と記号
等級:A級 記号:A
測定液位の±0.02% 液位が10m以下のときは±2mm
等級:B級 記号:B
測定液位の±0.05% 液位が5m以下のときは±2.5mm
等級:C級 記号:C
測定液位の±0.08% 液位が5m以下のときは±4mm
等級:S1級 記号:S1
任意の液位について±7.5mm
等級:S2級 記号:S2
任意の液位について±10.0mm - ヒステリシス差の許容値
A級:1mm
B級:3mm - 感度
A級およびS1級:2mmの液位変化に対し,1mm以上の指示変化を生じること。
B級およびS2級:4mmの液位変化に対し,2mm以上の指示変化を生じること。 - 測定範囲
5m,10m,15m,20m,25m
さいごに
ディスプレースメント式液面計は古くから使用されており,使用実績も十分にある液面計です。
測定精度も高く,高温高圧プロセスでも測定が可能な計器です。
ただし,計器が大きく他の液面計に比べて高価であること,取り付けが大掛かりになりがちなこと,駆動部があることなど,設置には十分検討が必要かと思います。



基本的には差圧式の液面計に置き換わりつつある液面計と考えています。どうしてもその他の液面計で測定できないときの最後の手段としています。
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