光通信で使用される光ファイバケーブルとは

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・光ファイバケーブルが分かる

point
・光ファイバ/光ケーブルは大容量,長距離伝送が得意
・光ファイバ/光ケーブルには種類がある

目次

光伝送(光通信)とは

光の物理的な性質を利用して信号を送ることを光伝送と言います。

光伝送はデジタル信号を伝送するのに使用されます。

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デジタル信号は0(ゼロ,OFF),1(イチ,ON)のため,「光(パルス列)」で伝送することが可能です。

光ファイバケーブルの特徴

光伝送を行うために光ファイバケーブルと言われるケーブルを使用します。

個のケーブルは平衡対ケーブルや同軸ケーブルと違い,伝送損失がとても小さく,大容量の伝送が可能で,さらに長距離の伝送にも適しています。

メタルケーブル(伝送媒体となる芯線(心線)金属材料を用いたケーブル)で発生しやすい電磁誘導などのノイズが発生しないため,光ファイバケーブルでの伝送は外部影響のない伝送方法と言えます。

光ファイバケーブルの構造

光ファイバケーブルは,石英ガラスやプラスチックを主材料としており,中心部のコアとその周囲を覆うクラッドの二層構造となっております。

コアとなる部分の屈折率を周辺部(クラッド)よりも高くすることで,光はコア内で全反射し,光はコア内に閉じこめられた状態なります。そのため,長距離の伝送が可能となります。

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光は屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むときに入射角を徐々に大きくしていくとあるところで全反射するようになります。

光ファイバーケーブルの伝送損失

光ファイバケーブルは外部影響は少ないですが,伝送損失が発生します。

モード分散

マルチモード光ファイバケーブルで発生する分散です。

多数のモードを一つのコア内に伝送することで,光の到達時間がずれることで発生します。
※モードとは「光がケーブル内を伝搬する経路による伝わり方」を意味します。

入射角の小さい光や入射角の大きい光があることで,反射回数が異なります。コアの屈折率分布が一定であれば,反射回数の多い光は到達時間が長くなるため,複数のモードのによって光ファイバケーブルの末端で信号が歪みます。(パルスが広がるとも言います。)

これを「モード分散」と言います。

波長分散

光ファイバを伝搬する光波の速さは波長によって違うため,波長によって到達時間が異なります。この現象を波長分散といい,波長多重信号などの高速・大容量光通信において光信号波形を歪ませます。(パルスが広がるとも言います。)

また伝送容量(伝送スピードともいいます)を制限する一因となります。

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波長分散と逆の特性を持つ分散補償ファイバを接続することで,波長分散の影響を打ち消す方法があります。

光ファイバケーブルの種類

光ファイバケーブルは光の伝搬するモードの数によって「マルチモード」と「シングルモード」の2種類に分類されます。

マルチモード光ファイバ

・コアの屈折率分布の違いにより2種類に分けられます。

ステップインデックス
グレーデッドインデックス

マルチモード光ファイバの特徴

シングルモードと比較して,伝送損失は大きいが接続が簡単で対応ネットワーク機器も安価
550m以下の中距離伝送に適している
コア径が太く,折り曲げに強い

  • 全反射を繰り返しながら進むため,モード間によって伝送時間に違いを生じやすい
  • 大容量通信,長距離通信に不向き

シングルモード光ファイバ

・零分散波長の違いにより,3種類に分けられます。

汎用シングルモード
分散シフト・シングルモード
非零分散シフト・シングルモード

シングルモード光ファイバの特徴

  • コア径を小さくすることでモードを1つにした光ファイバ
  • 高速通信が可能
  • 1310nm帯に零分散波長があるため,伝送損失が小さく,安定した通信が可能
  • 1km以上の長距離通信に適している(40km程度なら伝送損失を最小限に抑えられる)
  • ケーブルがガラス繊維のためマルチモードより高価
  • コア径が細く,折り曲げに弱い
  • 融着作業に専用の器具が必要

光ファイバケーブルのそれぞれの特徴

ステップインデックス (マルチモード光ファイバ)

コアの屈折率が一定の光ファイバで,光はコア内を多くのモード(光の通り道)に分かれて伝搬します。しかし,モードが多くなると信号が大きく歪みます。このため「ステップインデックス」は狭帯域になるため,現在ではほとんど使用されていません。

グレーデッドインデックス (マルチモード光ファイバ)

コアの屈折率を滑らかに分布させた光ファイバで,50μm、または62.5μmのコア径を持っています。

コア内の屈折率を滑らかに変化させることで,「ステップインデックス」で発生する伝搬信号の歪みが,改善されました。最短距離を進むモードは屈折率の高いコア中心を通るため光の速度が遅く,遠回りするモードは屈折率の低い部分を通るため光の速度が速くなるため,相対的にどのモードの光も同じ速度で伝搬することができます。

「グレーデッドインデックス」は「シングルモード」に比べ伝送損失が大きいですが,光ファイバ接続が簡単でネットワーク機器も圧倒的に安価なため,LANなどの近距離情報通信用途として広く使用されています。

汎用シングルモード (シングルモード光ファイバ)

コア径を小さくすることでモードを1つにした光ファイバで,マルチモードで見られたようなモードの違いによる伝搬信号の歪みは発生せず,広帯域な特性を持っています。

汎用のシングルモード光ファイバは,1310nm帯に零分散波長があるため,伝送損失が低く優れた特性を示すため,高品質で安定した通信が求められる幹線網に用いられることが多いです。

分散シフト・シングルモード (シングルモード光ファイバ)

分散シフト・シングルモード光ファイバは、伝送損失が1310nm帯よりも低い1550nm帯を零分散波長としたシングルモード光ファイバです。長距離伝送に適しています。

非零分散シフト・シングルモード (シングルモード光ファイバ)

非零分散シフト・シングルモード光ファイバは,零分散波長を1550nm 帯から少しずらすことにより,1550nm帯での非線形現象を抑制した光ファイバです。波長分割多重(WDM)伝送に向き,超高速の長距離伝送に適しています。

さいごに

光通信と言えど,通信方式は多種にわたります。しっかり,それぞれの特徴を理解して,適切な選定が必要になりますね。

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この記事を書いた人

生産技術系のエンジニアです。日々,計装関係の仕事に従事しています。 生産技術系ブログ【計装便覧.com】を運営中。主に計装設計についてまとめています。また仕事の時短ワザなども紹介しています。計装技術については初心者でもわかりやすくをモットーに執筆中!

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