■計装 ▶︎施工 ▶︎接合について
目次
金属接合の種類
金属同士をつなぎ合わせる方法としては,「機械的接合」「冶金的接合(やきんてき),材料的接合」「化学的接合」があります。
- 機械的接合
機械的接合とは,ボルトやリベット,かしめなどを用いて接合する方法です。
- 冶金的接合,材料的接合
冶金的接合には「融接」「圧接」「ろう接」などがあり,それぞれ使用するエネルギーによる様々な接合方法です。
- 化学的接合
ファン・デル・ワールス力,アンカー効果などで強力に密着し,接合させる方法です。いわゆる「接着剤」を使用した方法となります。
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接合一つとっても3つの方法に分類できるとはびっくりですね。
機械的接合
機械的接合とは主にボルトやリベット(かしめ)を用いた「機械的な」接合方法です。
高度な作業が必要なく,作業に「熱源」「火」を使用することほとんどないため,火災・事故になりにくい特徴があります。(焼きばめは除きます)
- 機械的接合方法の分類
機械的接合方法は「摩擦」「支圧」「引張」の3つに分類できます。
- 機械的接合方法の種類
- ボルト,ナット
- リベット,加締め(かしめ),ハトメ
- 焼き嵌め(やきばめ)
- 冷やし嵌め(ひやしばめ)
種類 | 説明 |
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ボルト,ナット | ボルトとナットの2部品で締め付けることで接合します。一般的でコストが低い。分解も簡単なのでメンテナンス性が高い。フランジ接続によく使用されています。 |
リベット,加締め(かしめ),ハトメ | 一方の端に丸い頭をもった柱状の締結金具です。つなぎたいパーツそれぞれに穴をあけ、その穴にリベットを通してかしめてつなぎ合わせるという方法。 |
焼き嵌め | 外側の品物(外輪)を加熱して寸法を大きくして嵌め合わせる方法。膨張収縮を利用した接合方法です。 |
冷やし嵌め | 入れ子(なかに入る側:内輪)になる品物を液化炭酸ガスや冷蔵庫などで冷やして寸法を小さくして嵌め合わせる方法。膨張収縮を利用した接合方法です。 |
- 機械的接合方法の特徴
※種類によっては該当しない接合方法もあります。
- 高度な作業,技術を必要としないことが多い
- 局部的な加熱冷却に伴う変形がない
- 異材接合の際に制約条件が少ない
- 接合部で切り離すことが容易(メンテナン性が高い)
- 「熱源」「火」を使用することほとんどない
- 下穴を開ける加工コストがかかる
- ボルトやナットなどの接合材料が増えるため,重量が重くなる
- 継手形状が重ね継手のみ,接合部に突起ができるため,設計形状に制約ができる
冶金的,材料的接合(溶接)
冶金的接合とは熱,圧力,またはその両方を加えて金属を溶融させて,再び個体に戻すことで接合する方法です。
溶接は「冶金的接合」とも呼ばれ,金属が持っている性質を利用して加工します。
熱や圧力を与える方法の違いにより、溶接加工には60種類以上の種類が存在し,溶接方法は多岐にわたります。
- 冶金的接合方法の分類
冶金的接合方法は「融接」「圧接」「ろう接(液相・固相接合)」の3つに分類できます。
- 冶金的接合方法の種類
- 融接
アーク溶接,ガス溶接,レーザー溶接 - 圧接
摩擦圧接,ガス圧接,爆発圧接,拡散接合,抵抗溶接 - ろう接
ろう付け,はんだ付け
種類 | 説明 |
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アーク溶接 | 「アーク放電」という電気的現象を利用した溶接方法 |
ガス溶接 | 可燃性ガスが燃焼する際に発生する熱を利用して金属の接合を行う溶接方法 |
レーザー溶接 | 指向性の高い波長の光をレンズで集め,高エネルギー密度のレーザー光を熱源とした溶接方法 |
電子ビーム溶接 | 真空中で電子ビームを発生させたときに出る熱を使う溶接法 |
種類 | 説明 |
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摩擦圧接 | 金属や樹脂など接合する母材を高速で擦り合わせ,摩擦熱で母材を軟化させ,同時に圧力を加えて接合する方法 |
ガス圧接 | アセチレンガス・酸素で加熱し,母材が溶け始めたら母材どうしを押し付け合い接合する方法 |
爆発圧接 | 二種類の金属を爆発力によって高速で衝突させ,両者を結合させる方法。俗に爆着(ばくちゃく)。 |
拡散接合 | 母材を溶融させることなく加熱・加圧保持し,接合面を横切って接合界面の原子を拡散させ,金属学的に完全な接合部を得る方法 |
抵抗溶接 | 溶接したい2片の金属母材を上下から電極で挟み込み,接触部を電極で加圧を行い,加圧した電極より金属母材へ大電流を流すことにより電気抵抗で発生するジュール熱で局部的に発熱・溶融させ接合する方法 |
種類 | 説明 |
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ろう付け | ろうを用いて,⺟材をできるだけ溶融しないで⾏う溶接⽅法。ろう付け(融点:450°C以上) |
はんだ付け | 低融点のはんだ(軟ろう)を用いて,⺟材をできるだけ溶融しないで⾏う溶接⽅法。はんだ付け(融点:450°C未満) |
- 冶金的接合方法の特徴
※種類によっては該当しない接合方法もあります。
- 気密性が高い
- 重量が低減できる。機械的接合と比較しボルトやナットを使用しなくて良い
- 自由度が高い
- 部品点数が少ないため工数が少なく,組み立てが容易
- 溶接士の力量により,均一な精度維持が困難
- 欠陥が発生することがある(特殊な検査方法での確認が必要)
- 解体が難しい
- 本質的に「熱」「火」を使用するため,火気厳禁の現場では使用できない
化学的接合(接着剤)
化学的接合とは,いわゆる「接着剤」を使用した接合方法です。
接着剤の種類は古くから使われている漆などもその一つであり,多種多様な種類が存在します。
漆も化学的接合の一つとは驚きですね。
- 化学的接合方法の分類
化学的接合方法は「機械的結合(アンカー効果,投錨効果)」「化学的相互作用」「物理的相互作用(分子間力,ファンデルワールス力)」に大きく分類できます。
- 化学的接合方法の種類
- 嫌気性接着剤
- 紫外線硬化型接着剤
- 瞬間接着剤
- 弾性接着剤
- エポキシ接着剤
化学的接合方法の特徴
※種類によっては該当しない接合方法もあります。
- 異素材間の接合が容易
- 接合に「熱」「火」など高温が必要ない
- 接合歪みが小さい
- 隙間の充填性がある
- 高度な技能が不要
- 接合面が小さいと耐久性に乏しくなる
- 点での接合に弱い
さいごに
「接合」と一言で言えど,様々な種類があり,たくさんの特徴があります。接合だけで,一冊の本がかけるだけ,研究され,実用化されています。
計装分野では接合は多くの知識は必要としませんが,「こんな種類があって,こんな特徴があるんだな」くらいで良いかと思います。
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