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容積式流量計は,PD(Positive Displacement Flow-meter)とも呼ばれます。計量カップで測定するようにケーシングとギアの隙間(容積)分の液体をカウントすることで高精度に測定します。容積式というように体積流量を測定します。

高粘度流体に強く,高精度に測定できる流量計です。
容積式流量計の構造
一定容積の容器で流体の容積を直接測定する流量計です。ギアとケーシングの間の一定容積(升や計量カップに相当します)分送り出すことで流量がわかります。


以下が一連の流れです。ギアの回転数をカウントすることで測定しますので,出力される信号はパルスということになります。パルスの分解能が小さくなれば,瞬時流量も求めることができますね。







上の絵ではギアが丸くなっていますが,実際にはギザギザした表面です。
容積式流量計のギアはなぜ回転するのか
ギアaの状態だと,流れに対してギアが受ける圧力は均一に受けるため,ギアは回転しません。
しかしギアbの状態ですと,流れ方向に対してギアが受ける圧力と,一定容積(升)の圧力とのバランスが崩れるため,ギアbが回転します。
ギアbが回転することでギアaも回転し,連続に流体が供給されることで,ギアa,ギアb共に回転し続けるわけです。





ギアが受ける流体の圧力の状態がどうなるか考えるとわかりやすいと思います。
容積式流量計の特徴
下に面積式流量計の特徴をまとめます。
- 流体エネルギーを利用して測定するため,電源不要
※バッテリーで使用できるモデル有 - 直管部が不要
- 流体の温度,圧力,粘度などの物性に影響されにくい
- 高粘度流体の測定に適している
- 高精度に測定が可能
- 異物,固形物の混入に弱い。ストレーナーで異物除去が必要。
- 原理的に可動部があるため,定期的にメンテナンスが必要
- ギアが動かなくなると流体が流れなくなる
- 瞬間的に流量が大きくなるとギアが「がじる」恐れがある
- 粘度が低いと精度が悪くなる(ギアとケーシングの隙間からの漏れ量が増えるため)
- 測定対象は主に液体(気体を測定する型式もある)
出力信号はパルス出力となります。
※瞬時流量を得たい場合は,専用の変換器や伝送器内部に瞬時流量を演算させる機能が必要です。DCSに入力されているのであれば,瞬時流量を計算させることもできますね。



高粘度で高精度に測定できますが,機器が高価であることと,可動部のトラブルが多い印象です。一方で電源が不要なため,試験的な測定など,融通しやすい利点もあります。
さいごに
容積式流量計は非常に高精度に測定が可能で,電源も不要な流量計です。しかし,流量計内部に可動部を持つため,故障やトラブルになるケースが見られます。
出力される信号もパルスであることから瞬時流量が計りたいときは計算,演算して上げる必要があります。(伝送器内部に演算機能を持っていたり,専用の変換器が必要であったり,DCSの機能で計算させることもできます。)
流量計の持つメリット・デメリットを理解して,適切な場所に設置していきましょう。
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