バルブは配管内の液体,ガス,粉体の流れを止めたり,流したり,流量を調節したり,産業から家庭に至るまで使用されています。
バルブ中の種類の一つボール弁について説明します。
ボール弁とは
ボールバルブは流体の流れを遮断,制御する弁体がボールのような形状をしたバルブです。
ボールバルブは弁体が「回転」することにより,流体を流す(ON/OPEN)、及び止める(OFF/CLOSE)用途に使用されます。
バルブの流路と配管径が同等の「フルボア構造」のため,流体抵抗がとても小さいため,圧損が少ないことが特徴です。操作性,応答性も
JISでは
「弁体が球状で,コックに類似するバルブ。弁体は,全面球と半面球がある。」
と規定されています。
ボール弁の構造
ボール弁の構造は一般的に以下の構造をしています。
株式会社キッツ ボールバルブ総合カタログ
ボール弁には大きく分けて「フローティング構造」と「トラニオン構造」の2つの構造があります。
株式会社ハマイ ボールバルブの基礎知識
- フローティング構造
ボールがシートに抱え込まれている構造のボールバルブです。本体の流路に配置された2枚のシートでボールを挟み込んでいます。
流体圧力により,弁体(ボール弁)が押されることにより,2次側シートとの密着性が高まることで,シール性能を発揮します。
株式会社キッツ ボールバルブ総合カタログ
- トラニオン構造
ボールを上下の軸でしっかり支える構造のバルブです。回転軸に支えられてるため,弁体(ボール弁)は流体圧力の影響を受けにくくなっています。
ボールシートはシートは本体(ボディ)との間に内蔵されたスプリングで押されることでシール性能を発揮します。
スプリングでシールするため,安定したシール性を長期間保持することができますが,フローティング構造と比較し,複雑で部品点数が増えるので高価です。
高温,高圧,開閉頻度が多い,高粘度流体,粉体など使用条件が厳しいところに使用されることが多いです。また中口径以上のラインに使用されることが多いです。
株式会社日阪製作所 トラニオン式ボールバルブ
ボール弁の種類
シート材質や弁体が若干異なるボール弁や,ポケット構造に手を加えたものなどいくつか種類があります。
- フルボア
配管の内径とバルブの流路の大きさが同等のものを指します。
- スタンダードボア
配管の内径よりもバルブの流路の大きさが1サイズ小さいものを指します。
- レデュースドボア
配管の内径よりもバルブの流路の大きさが1サイズ以上小さいものを指します。
- ソフトシート
ソフトシートは,樹脂(PTFEなどのフッ素系)やゴム素材のボールシートをソフトシートと呼びます。最も採用されているシートのタイプで,優れた気密性が得られます。
しかし,高温の流体を流す配管には不向きです。また,シートによっては溶剤やアルカリに腐食を示すものがあります。
- メタルシート
メタルシートは,材質が銅合金やステンレスのボールシートを採用したボールバルブで高温の場所にも使用できます。
粉体・スラリー・高粘度流体などソフトシートに適していない流体でも対応が可能です。
気密性はソフトシートに劣ります。
- ライニング
PFAライニングのボール弁もあり,耐食性に優れてます。
- Vポート(Λポート)
通常ボール弁の流量特性はほぼイコールパーセント特性に近いです。開度が20°位から流体が流れ始めますが20°以降は開度に対して流量が大きく変化するため,調節弁としては不向きです。
これら調節機能を改善したVポート(Λポート)と言われるボール弁があり,希望の流量特性を得ることができます。
ボール弁の特徴
下にボール弁の特徴をまとめます。
流量特性はほぼイコールパーセント特性
レンジアビリティは100:1程度
※流量特性を改善したVポート(Λポート)タイプ有り
- 90°回転させればよいため,操作性に優れ,操作時間が短い
- 流路が配管径と同じになるためCv値(弁容量)が大きくとれる(圧力損失が小さい)
- ソフトシートの場合,完全閉止が可能
- 細かい流量調整には不向き(オンオフ弁として使用されことが多い)
弁・バルブの規格
弁・バルブに関わる規格は以下に規定されています。
JIS B0100
バルブの用語
JIS B2001
バルブの呼び径及び口径
JIS B2002
バルブの面間寸法
JIS B2003
バルブの検査通則
JIS B2004
バルブの表示通則
JIS B 2005-1
工業プロセス用調節弁−第1部:調節弁用語及び一般的必要条件
JIS B 2005-2-1
工業プロセス用調節弁−第2部:流れの容量−第1節:取付け状態における流れのサイジング式
JIS B 2005-2-3
工業プロセス用調節弁−第2部:流れの容量−第3節:試験手順
JIS B 2005-2-4
工業プロセス用調節弁−第2部:流れの容量−第4節:固有流量特性及びレンジアビリティ
JIS B 2005-3-1
工業プロセス用調節弁−第3部:寸法−第1節:フランジ形二方ストレート形グローブ調節弁の面間寸法及びアングル形グローブ調節弁の中心−面間寸法
JIS B 2005-3-2
工業プロセス用調節弁−第3部:寸法−第2節:バタフライ弁を除く回転形調節弁の面間寸法
JIS B 2005-3-3
工業プロセス用調節弁−第3部:寸法−第3節:突合せ溶接形二方ストレート形グローブ調節弁の面間寸法
JIS B 2005-5
工業プロセス用調節弁−第5部:表示
JIS B 2005-6-1
工業プロセス用調節弁−第6部:調節弁へのポジショナの取付けの詳細−第1節:直線運動駆動部へのポジショナの取付け
JIS B 2005-6-2
工業プロセス用調節弁−第6部:調節弁へのポジショナの取付けの詳細−第2節:回転運動駆動部へのポジショナの取付け
JIS B 2005-7
工業プロセス用調節弁−第7部:調節弁データシート
JIS B 2005-8-1
工業プロセス用調節弁−第8部:騒音−第1節:調節弁の空気力学的流動騒音の実験室における測定
JIS B 2007
工業プロセス用調節弁−試験及び検査
さいごに
ボール弁は遮断弁として使用されることが多いです。また操作性も優れており素早く全開全閉が可能なのも大きな特徴です。
材質,構造ともに多岐にわたるため,よく調べておくことが大切です。
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