静電容量とは
静電容量とはいわば蓄電能力です。キャパシタンスともいいます。コンデンサーという方が馴染みがあるかもしれません。
面積Sの2枚の金属板を距離dだけ離して平行に置きます。この金属板の間に電界をかけると,ここに静電容量が生じます。
両平板の間に何らかの物質が存在すると,この静電容量は\(ε・S/d\)に比例した値となります。
式中のεは比誘電率と言い物質に固有の値です。両平板間が真空の場合の誘電率を1とした時の比で表される値です。\
\(C = ε・\frac{S}{d}\)
\(C:静電容量\)
\(ε:比誘電率\)
\(S:面積\)
\(d:金属板(電極)の距離\)
静電容量式液面計の測定原理
円筒状の静電容量計算式は以下のようになります。
※ここでは静電容量の計算式の導出は解説しません
\(C = 2πε\frac{H}{ln(\frac{R2}{R1})}\)
\(C:静電容量\)
\(ε:比誘電率\)
\(H:円筒の高さ\)
\(R1:電極の半径\)
\(R1:液面の容器内における半径\)
つまり静電容量は\(H\)に比例していることが分かります。
静電容量は\(H\)が0%(液がない)のときが一番小さく,\(H\)が100%(液が満液)のときが
一番大きくなります。
静電容量の変化を外部回路にて検出することで液位を測定することができます。
静電容量式液面計の構造
静電容量式液面計は測定対象(液体)が絶縁体であれば測定可能です(内部電極と外壁との距離によりますが)。注意すべきは,導電性を有する場合です。
静電容量式液面計は測定対象(液体)が導電性を有する場合は,液体は「静電容量(電荷)」を蓄えることができません。\(R=0\)となり,短絡(ショート)とみなせるからです。
その場合,静電容量式液面計のプローブ(センサー)は内部電極をテフロンやPVC(下図の黄色の点線)などの絶縁性物質でコーティングします。
コーティングすることにより,外側の容器(金属の場合)が外部電極となり,内容物の高さが変化することで\(C1\)が変化し,液位が測定できます。
このとき\(C2\)には電荷は貯められませんので,変化しません。
静電容量式液面計の特徴
下に静電容量式液面計の特徴をまとめます。
比誘電率に影響される
比誘電率が小さいもの = 静電容量の変化は小さい
比誘電率が大きいもの = 静電容量の変化は大きい
グランド(プローブ/センサーと貯槽/タンク壁間)までの距離
- 界面測定も可能
- 機械的可動部品がないため,基本的にメンテナンスフリー
- 設置・保守が容易
- 温度・圧力等の使用可能範囲が広い
- 液体・粉粒体の両方に使用可能
- 腐食性流体に強い(ゴムやテフロンなどの樹脂系のコーティング,ライニングが可能なため
- 界面測定は2液共導電率が高いと測定が困難
- 物性,温度によって影響が出る
静電容量式液面計の規格(液面計全般)
JIS B7560
液位測定用自動レベル計
以下のものが規定されています。
- 種類
フロート-スプリングバランス式レベル計
ディスプレーサーサーボバランス式レベル計
マイクロ波式レベル計
静電容量式レベル計
その他 - レベル計の等級と記号
等級:A級 記号:A
測定液位の±0.02% 液位が10m以下のときは±2mm
等級:B級 記号:B
測定液位の±0.05% 液位が5m以下のときは±2.5mm
等級:C級 記号:C
測定液位の±0.08% 液位が5m以下のときは±4mm
等級:S1級 記号:S1
任意の液位について±7.5mm
等級:S2級 記号:S2
任意の液位について±10.0mm - ヒステリシス差の許容値
A級:1mm
B級:3mm - 感度
A級およびS1級:2mmの液位変化に対し,1mm以上の指示変化を生じること。
B級およびS2級:4mmの液位変化に対し,2mm以上の指示変化を生じること。 - 測定範囲
5m,10m,15m,20m,25m
さいごに
静電容量式液面計は腐食性にも強く,測定可能対象物が多いです。
また,液体も粉も両方測定ができることが最大の特徴かもしれません。
ただし,誘電率に影響されやすいため,複数の液体の存在下では測定が難しいかもしれません。
また,温度変化でも誘電率が変化するため静電容量を貯めにくい流体の場合はセンサーの選定に注意が必要です。
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