バルブは配管内の液体,ガス,粉体の流れを止めたり,流したり,流量を調節したり,産業から家庭に至るまで使用されています。
バルブ中の種類の一つダイヤフラム弁について説明します。
ダイヤフラム弁とは
ダイヤフラムバルブとは,一般的にゴム等の可とう性のダイヤフラム(隔膜)を弁座に押し付け流路を開閉する構造をもつバルブのことをいいます。
ピンチバルブの下半分を固定したような形状をしているため,流量特性もピンチバルブに似ています。
下図のように本体中央部に「せき」をもち,ダイヤフラムの上下動により流体を遮断,調整する弁を「ダイヤフラム弁(サンダース弁)」と言います。
一般社団法人日本バルブ工業会 バルブにはどんな種類があるの?
ダイヤフラムはゴムや,樹脂製が使用され,本体にはPTFEライニングやゴム,ガラスなどをライニングすることで耐食性を向上させて使用することができます。

ダイヤフラムとは弾性力を持つ薄膜を意味します。ダイヤフラム弁というとこの弾性薄膜を使用した弁であることが何となくわかりますね。
そもそもダイヤフラムとは
ダイヤフラム【diaphragm】
weblio辞書
金属または非金属の弾性薄膜。圧力計・流量計などの計器、電話機の振動板、ポンプなどに利用する。振動板。
弾性力を持つ薄膜を意味します。ダイヤフラム弁というとこの弾性薄膜を使用した弁であることが何となく想像ができます。
ダイヤフラム弁の構造
ダイヤフラムバルブは下図にの通り、「本体」「ダイヤフラム」「駆動部」により構成されます。
ダイヤフラムが駆動部を流体より隔離され駆動部によって引上げ、もしくは本体の弁座に押し付けることにより,流路を開閉する構造です。
引用元
日本ダイヤバルブ株式会社 ダイヤフラムバルブの構造と特長
ダイヤフラム弁の種類
- ウェア形ダイヤフラム弁
- 流路に堰(ウェア)をもつダイヤフラムバルブの基本形
- ダイヤフラム(隔膜)で流体を仕切る構造上,気密性に優れ,駆動部からのグリスなどので流体を汚染しない構造
- 「駆動部」「ダイヤフラム」「本体」から構成されたシンプルな構造です。
- トップエントリー方式なのでダイヤフラム交換などメンテナンス作業が容易
- 本体とダイヤフラムの材料は種類が多く,流体の組成に合わせた材料を選定できるので,耐食・耐薬品性が求められる場合に最適
- ストレート形ダイヤフラム弁
- 流路が直線状(ストレート)に近く,圧力損失,液溜りの少ない構造
- 粘性流体,繊維質流体,スラリー,汚泥(スラッジ),浮遊固形物などを含んだ流体に適している
- ライニング型ダイヤフラム弁(構造ではありませんが)
- ダイヤフラムはゴム製とふっ素樹脂製の2種類に大別
- ゴム製(天然ゴム,クロロプレンゴム,ブチルゴム,ニトリルゴム,EPDM)
ふっ素樹脂製(接液側:NEW.PTFE/クッションゴム:EPDMの2層構造)
※グラスライニングもラインナップとしてはありますね。(グラスライニングは寿命判定が難しいので極力採用は避けたいですが)
ダイヤフラム弁の特徴
弁棒などの駆動部と流路がダイヤフラムで遮断されているので,駆動部のすき間に流体が入り込んだり,駆動部のグリス(潤滑油)など不純物が流体に混ざったりすることはありません。
また材質のラインナップも豊富なため,腐食性流体などにも使用されることが多いです。液だまりしにくい構造であることも特徴の一つです。
- 洗浄性がとても高い
- 駆動部からの漏れ(グランド漏れ)がない
- 駆動部のグリース等により流体を汚染がない
- ダイヤフラムが弾性体であるため,流体内の若干の異物を弁座部に噛み込んでも漏洩を防ぐことができる
- ダイヤフラムと本体により構成される流体通路部は,ポケット部が無く,流線形であるため,流体抵抗が少なく,洗浄性に優れている
- ダイヤフラムの交換は,本体とボンネットを締結しているボルト・ナットを取外すだけで容易にでき,メンテナンス性に優れている
- 各種耐食素材(ゴム,ガラス,ふっ素樹脂等)が選定でき,各種材料のダイヤフラムとの組合せにより,幅広い流体仕様に適合したバルブを製作することができる
- ダイヤフラムの材質によっては,流体の温度圧力など使用条件がかなり限られる
- 他のベント比較して耐久性に難がある
弁・バルブの規格
弁・バルブに関わる規格は以下に規定されています。
JIS B0100
バルブの用語
JIS B2001
バルブの呼び径及び口径
JIS B2002
バルブの面間寸法
JIS B2003
バルブの検査通則
JIS B2004
バルブの表示通則
JIS B 2005-1
工業プロセス用調節弁−第1部:調節弁用語及び一般的必要条件
JIS B 2005-2-1
工業プロセス用調節弁−第2部:流れの容量−第1節:取付け状態における流れのサイジング式
JIS B 2005-2-3
工業プロセス用調節弁−第2部:流れの容量−第3節:試験手順
JIS B 2005-2-4
工業プロセス用調節弁−第2部:流れの容量−第4節:固有流量特性及びレンジアビリティ
JIS B 2005-3-1
工業プロセス用調節弁−第3部:寸法−第1節:フランジ形二方ストレート形グローブ調節弁の面間寸法及びアングル形グローブ調節弁の中心−面間寸法
JIS B 2005-3-2
工業プロセス用調節弁−第3部:寸法−第2節:バタフライ弁を除く回転形調節弁の面間寸法
JIS B 2005-3-3
工業プロセス用調節弁−第3部:寸法−第3節:突合せ溶接形二方ストレート形グローブ調節弁の面間寸法
JIS B 2005-5
工業プロセス用調節弁−第5部:表示
JIS B 2005-6-1
工業プロセス用調節弁−第6部:調節弁へのポジショナの取付けの詳細−第1節:直線運動駆動部へのポジショナの取付け
JIS B 2005-6-2
工業プロセス用調節弁−第6部:調節弁へのポジショナの取付けの詳細−第2節:回転運動駆動部へのポジショナの取付け
JIS B 2005-7
工業プロセス用調節弁−第7部:調節弁データシート
JIS B 2005-8-1
工業プロセス用調節弁−第8部:騒音−第1節:調節弁の空気力学的流動騒音の実験室における測定
JIS B 2007
工業プロセス用調節弁−試験及び検査
さいごに
その他のバルブと比較して,耐久性に難があるといえどその魅力は豊富な材質のラインナップにあるといえると思います。
また,毒劇物など液溜まりを少なくするという意味でダイヤフラム弁を選定するということもありだと考えています。
耐久性,メンテナンス性を考慮した上で採用していく分にはとても有用な弁であると考えています。
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